
前回紹介しました巡乙こと阿賀野型軽巡洋艦4隻のほかに、マル四計画ではもう2隻の新型軽巡洋艦の建造を行っていました。
阿賀野型が水雷戦隊の旗艦になることを主目的としていたのに対し、本日ご紹介するのは潜水戦隊の旗艦として建造された巡丙こと「大淀型軽巡洋艦」です。
潜水艦といいますと大海を単独で航海し、出会った敵艦や輸送船団を襲撃するような印象がありますが
日本海軍はそういった使い方のほかに、水上艦隊の決戦に際して事前に潜水艦を敵艦隊へ差し向け、重雷装による水面下攻撃にてあらかじめ
敵艦隊の戦力を削いでしまおうという戦術が考えられていました。そのためには後方司令部との密接な連絡や遠距離まで見渡せる
偵察能力が要求されますが、潜水艦は構造上高いマストも艦橋も、さらには大型の無線機も持つことが出来ません。
そこで潜水母艦と呼ばれる艦に旗艦任務も行わせようとしましたが、もともとこれは補給や乗員の休養を目的とした移動基地のようなもので
商船や輸送船を改造して作ったために速度も遅く、武装も最低限の自衛を行える程度しか持っていませんでした。
結局潜水母艦に旗艦としての仕事を期待することは不適当であることが分かり、純粋な潜水艦部隊の戦闘指揮と索敵のためにあつらえられたのが
大淀型軽巡洋艦でした。




日本の巡洋艦としても過去に類を見ないほどに長大な艦型が美しいですね。この形は水線長をできるだけ長くして造波抵抗を下げ、
同じ出力の機関を搭載しても従来の艦よりもずっと高速を発揮することができるとして採用された設計です。
公式の値では最大35ノットとして解説されていますが、ある戦闘ではなんと速度指示計の上限である45ノットを針が指したと証言が残るほどで
FHSWでも最大40ノットの超快速で戦線を駆け巡ることが可能にしてあります。




既存巡洋艦の代替を図って建造された阿賀野型とは違って、大淀型は潜水戦隊の集中運用という新しい戦術の実証のために作られたものでした。
なによりも優先されたのは航空兵装、すなわちちょっとした戦艦の艦載機を上回る6機の偵察機を運用することが望まれました。
搭載される予定だった機体もこの艦のために新規開発された14試高速水上偵察機「紫雲」でしたが、残念ながら予定の性能を発揮することができず
試験生産された6機が実戦で全滅してしまったこともあり、たった15機の生産で打ち切りになってしまいました。ただ、これが判明したのが
大淀の完成後だったため、打ち出すための全長44メートルにも及ぶ新型の大型カタパルト「2式1号射出機10型」は搭載されたままでした。
本来の使い方をされることはなかったとはいえ性能的には零戦や彗星艦爆を射出することすら可能な、日本海軍が実用化した中では最大のものでした。




大淀型が他の日本艦艇、いやWW2当時では世界中のどこを探しても類似した船を見つけられなさしめているのがこの大型格納庫です。
本来の計画ではここへ折りたたまれた紫雲水偵を5機、カタパルト上の1機とあわせ合計6機を配備し広範囲の偵察を可能にするはずでした。
紫雲の開発失敗が判明したのちは、後述する改装工事に伴い急降下爆撃能力を持つ水偵瑞雲を搭載しようとした計画もあったようですが、
最終的には凡庸な零式水偵を2機搭載しただけで終わってしまいました。
ところで、見ていただいた通り巨大な格納庫のせいでゲーム内では後甲板との移動が2番席へ乗り降りする以外不可能になっていますが
これでは実際不便ですので、大和にあるような艦内通路を格納庫の前後連絡用に用意しました。
格納庫近くで乗り込みキーを押した後、適宜移動したい位置へ席移動したのちに降りてください。




主砲は大和型ですでにお馴染みになっている、3年式15.5cm三連装砲を2基6門搭載しています。
前回の阿賀野型の15cm砲とはうってかわって長砲身の破壊力と完全機械装填による高速発射を両立しており、史実の大淀も幾多の空襲を
それこそ300発搭載された主砲弾が尽きるまで(対空弾が尽きた後はこけおどしに徹甲弾や演習弾まで)連射し切り抜けてきた傑作砲です。
単位時間当たりの投射火力に優れているので、より大型の敵艦を相手にしてもコンスタントにダメージを与え続けることができるでしょう。


高角砲は防空駆逐艦秋月型で採用されて価値が認められた98式65口径10cm砲を連装4基8門搭載しています。
阿賀野型に搭載された98式8cm高角砲の兄貴分ですが、こちらは10cmの口径を確保していますので威力も必要十分かそれ以上です。
これまでの89式12cm高角砲と比較すれば倍の門数があるのと同じ能力を発揮するとまで言われたものであり、主砲ともども戦線各地での対空射撃に
多大な戦果を残しています。また12cm高角砲よりも連射が効きますので対空はもちろん対艦対地攻撃でも重宝するかと存じます。


さて、設計当初は潜水戦隊の旗艦として描かれた大淀型でしたが、紫雲の開発に失敗したということは存在意義を根底から揺るがすことになります。
大淀が完成した昭和18年には戦況はすでに艦隊決戦に先立っての潜水戦隊による敵艦隊襲撃などという戦術は空想夢物語となっていました。
存在しない偵察機のための艦など無駄の塊でしかなく、唯一持ち前の高速力と強力な対空火器により前線への兵員や物資の輸送任務はこなしていたものの
海軍内部では中途半端な立ち位置にいたことは否めませんでした。
一方、連合艦隊においては全艦隊指揮のあり方について議論が起こっていました。開戦から2年、地球の半球を覆うような広大な戦域を持つ日本海軍は
従来のように連合艦隊司令長官を第一艦隊の旗艦に座乗させ、第一線で指揮をしているようでは他戦域の艦隊への指揮に全く不便であることに気が付きます。
さらに当時連合艦隊の旗艦であった戦艦武蔵はご存じのとおり大和型の姉妹艦、少々の航海でも莫大な量の燃料を消費してしまい不経済極まりません。



そこで、持ち前の無線能力を買われて格納庫内部を3階に区切り連合艦隊司令部を受け入れ各戦域での指揮を行う「連合艦隊旗艦 大淀」が誕生しました。
紫雲の運用を諦めたため2式1号射出機10型も、通常の巡洋艦に装備されているのと同じ呉式2号射出機5型に置き換えられ、搭載機も改められました。
また阿賀野型と同様に時局に合わせた対空火器の増設も同時に行われ、これまで連装6基だった25mm機銃を3連装12基、さらに単装機銃も多数追加されました。
こちらのタイプをFHSWでは大淀1944年型として用意しました。通常型とは搭載する航空機の違いもないので、純粋に強化型として登場することでしょう。



いかがでしょうか、海物では最も好きな一隻でしたので少々力が入ってしまいましたが、モデルの作りこみにも開発の意気込みを感じていただけたら嬉しいです。
潜水艦を率いるためのフネが出たということは… 今後に期待ができる?(仮称)FHSW0.5はまだまだ未公開の要素を準備中です!続報にご期待ください!
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