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大海嘯のごとく押し寄せるソ連戦車軍団、押し止める槍は全て折れ、哀れなドイツ軍兵士は轢き潰されるのを待つだけなのか!?
いや、諦めるのはまだ早い。空を見よ!
大砲載っけたアツいやつ、Hs129の登場です。

1936年には勃発したスペイン内戦は、ドイツやソビエトにとって、新しい兵器や戦術をテストする格好の実験場となりました。この戦場では新しい近接航空支援のコンセプトも出現し、かの有名なJu87や複葉のHs123などの急降下爆撃が華々しい活躍を示しました。一方で、戦車や装甲車といった高速で移動する小さな目標への攻撃には急降下爆撃という戦術が適さないということも明らかとなります。特にHe51やHs123といった低速の機体では対空砲火による損害も無視できないものであり、敵対空火網に対する十分な生存性を備えたSchlachtflugzeug(攻撃機)の必要性が強く認識されることとなったのです。



これらの経験を踏まえて、1937年4月、ドイツ空軍省は各航空機生産会社に近接航空支援機の競争試作を提示しました。要求された機体は「20ミリ機関砲および爆弾を装備する小型双発機」であり、エンジンは465馬力のアルグスAs410を指定していましたが、こちらについては必須事項とはされていませんでした。本競争試作における最も重要な要求点としては、対空砲火に対する装甲が挙げられます。この航空機は戦場上空を低空で真っ直ぐ飛ぶことが想定されるので、回避運動をせずに敵弾を受け止めても撃墜されないことが要求されたのです。敵戦闘機に対する防御は要求されていなかったために尾部銃手は必要なく、それで浮いた重量で以ってエンジンやパイロットに装甲を施すこととされました。



この競作にはフォッケ・ウルフ航空機製造株式会社、ゴータ車両製造株式会社、ブローム・ウント・フォス社の航空部門であるハンブルグ航空機製造、そしてヘンシェル航空機製作所が参加しましたが、ゴータ社は早々に脱落してしまいます。

フォッケ・ウルフ社の案は偵察機Fw189に装甲を施したもので、比較的良好な視界と低速安定性が売りでした。
その反面、機体そのものの規模が他社の案より大きく、若干高コストに過ぎる嫌いがありました。

ハンブルグ航空機製造の試案P.40はHa141(後のBv141)の改造で、こちらもフォッケ・ウルフ社同様に偵察機を原型機としています。この案はアルグスAs410エンジン双発という要求を無視し、代わりにほぼ倍の出力を発揮するDB600エンジンを片方の胴体に備えていて、反対側には操縦席ポッドが配置するという特徴的な左右非対称機でした。視界を遮る物が操縦席ポッドの周りにはほとんど無く、極めて優れた視界を得ようという発想です。しかし、この機体は確かに視界こそ良かったものの、左右非対称あるが故に低高度域での直進安定性が不足するという、対戦車攻撃機としては致命的な問題を抱えていました。

残ったヘンシェル社の社内名称P.46案は前の2機とは異なり完全新設計の機体で、要求通りAs410エンジンを二機備えていましたが、何よりの特徴はその小ささでした。先の二機のうちで小型のP.40よりもさらに20%小さく、なんと単発機であるJu87よりも小さく纏められていました。胴体の断面形は角が丸まった三角形で、高さ116センチ、底辺は110センチ、上部の幅は僅か30センチしかないという有様で、この寸法は平均的なドイツ成人男子が納まる限界をもとに決定されました。

これらの機体サイズを押さえる工夫により、P.40は他社の案よりも格段に低い機体価格を設定することが出来ました。そして、いくつかの試作機テストと審査の結果、最終的に低コスト性を買われてP.46がHs129として正式採用されることとなりました。想定価格はフォッケ・ウルフ社案の2/3に過ぎなかったと言われています。



Hs129の正面風防は57mmもの厚さの防弾ガラスで、また当時としては珍しく、側面窓にも防弾ガラスを採用していました。もちろん風防以外の防御も強力で、エンジンは5mmの,パイロットは6mmから12mmもの厚さの“バスタブ”装甲に守られています。風防より前方の機首は急な角度で下がっており、胴体に邪魔されない良好な地上視界を得ることを狙いました。一方で、所々で無理な切り詰めによるしわ寄せも起きています。例えば、小さなコックピットに計器類をすべて納めることは不可能であったので、一部の計器はなんとコックピットから見えるエンジンナセルの上に配置されました。同様にReviC/12C型照準器も外に押しやられ、風防ガラスの前に取り付けられています。

1940年に試験的に実戦投入されたHs129Aは早速問題点を噴出しました。狭すぎるコックピットでは操縦桿を満足に動かすことすらままならず、また頭を動かす余裕のないコックピットと枠の多すぎる防弾ガラスのせいで、前下方以外の視界も限られていました。それら以外にも様々な問題がありましたが、中でも一番致命的であったのは、やはり非力なエンジンでした。強力なエンジンを搭載すればすぐに解決する問題ではありましたが、ドイツ国内におけるエンジン生産量の限界がそれを許しません。

結局この問題は、フランス占領によって700馬力のノーム・ローンエンジンを大量に使用できるようになって解決を見ることになります。また視界問題についても、機首形状をより丸みを帯びたものに変え、三分割されたフロントガラスを一枚板の大きなものに変更することで改善されました。この変更は空力特性の改善にも寄与し、エンジンの出力向上とも相まって、速力と運動性も随分と向上しました。

これらの問題を解決したHs129Bシリーズは、頑丈で精度と破壊力に優れた対戦車攻撃機として生まれ変わりました。敵戦車の硬い殻を撃ち破ることから、くるみ割り器に掛けて「Panzerknacker(戦車割り器)」、あるいは「Buchsenoffner(缶切り)」と渾名されて活躍を賞賛され、慢性的な戦車不足に悩むドイツ軍を影ながら支えたのです。重装甲と強力な武装を備えた対戦車攻撃機というコンセプトは、第二次大戦終結後数十年を経て新たな破壊神の誕生へと繋がるのですが、それはまた別のお話になります。



それでは、Hs129の各バリエーションの解説に移りましょう。
最初の量産型であるHs129B-1の固定武装は量産前機のA型とほぼ同様で、主翼付け根には左右各1挺の7.92mm MG17機関銃があり、これには一挺あたり500発の弾丸が搭載されています。胴体側面の膨らみには左右一門ずつのMG151/20 20mm機関砲とそれぞれ125発の弾丸が収められており、これはパイロットすぐ脇の機体の窪みを通して発射されました。加えて胴体下には爆弾架が装備されており、4発の50kg爆弾か、または96発の2kg対人爆弾を搭載することができました。

他のドイツ軍航空機と同様、Hs129にも標準武装に加えて、前線レベルでの換装が可能なR武装キットが用意されてました。

R1型は両翼下に一つずつETC50型爆弾架を追加したものです。この改造により、50kg爆弾なら6発、2kg対人爆弾ならば計144発を搭載できるようになりました。
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R2型は、30mm MK101機関砲を備えた型で、戦車に対する掃射能力を強化したバリエーションです。MK101は30x184mmという非常に大きな薬莢を用いる機関砲で、特にタングステン弾芯を備えた硬芯徹甲弾を用いた場合、至近距離では80mm以上の貫通力を発揮することができました。80mmの貫通力というと現代のA-10攻撃機の30mm アベンジャー機関砲にも勝りえるもので、MK101がいかに高い貫通力を持っていたか判ると思います。この威力はスペックシート上だけでなく実戦においても十分発揮されており、実際にKV-1重戦車の厚さ75mmの砲塔側面装甲を撃ち抜いた写真が残されています。
もちろん、MK101は決して完全無欠の究極武装ではありませんでした。30mm弾は貫通力こそ高いものの重量が軽いため、一発で敵戦車を撃破することは困難でした。しかしながら、MK101発射速度は毎分250発でしかなかったため、命中弾数を稼ぎにくくなっていたのです。またドラム式弾倉の容量は僅か30発で、長々と時間をかけて戦場上空まで進出しても、ほんの8秒足らずで撃ち尽つくしてしまいました。
尚、この30mm機関砲は胴体下面に装着するため、これまでそこにあった50kg爆弾ラックは装備できなくなります。しかし、R1型と同様の翼下爆弾架を併用することが出来たため、重量の増大というデメリットはありますが、一応は2発の50kg爆弾を搭載可能でした。

R3型は特に軟目標への対地掃射能力を重視した型で、胴体下に7.92mm MG17機関銃4挺を備えています。各銃には1000発ずつ、合計4000発が装填されていました。この型でもR2型と同様に胴体下爆弾架は使用できなくなり、翼下2発のみの爆装となります。

R4型はトーチカなど、移動しない硬化目標に対する攻撃を目的としていて、胴体下のETC50爆弾架4つに代えて、ETC250爆弾架に一発の250kg爆弾を搭載することが出来ます。この装備の場合は重量の関係で、翼下のETC50爆弾架は装備できなくなります。

R5型は写真偵察型で、通常型の固定武装に加えて、R50/30カメラを搭載しています。この型は一切の爆装をすることができません。



続くHs129B-2型は、これまでの機首脇7.92mm機銃を13mm MG131に換装したものです。MG131の発射速度はMG17とほとんど変わらず、大口径化したことに加えて榴弾も発射できるようになったため、特に軟目標や軽装甲の標的への掃射火力が大幅に増しています。この機関銃には一挺あたり250発の弾薬が備えられていました。また爆弾架もETC500に変更されており,最大搭載量が500kg1発に増大しています。このETC500爆弾架には50kg爆弾架そのものを懸架することも出来たため、大規模な換装作業なしに50kg爆弾4発と切り替え出来るようになりました。

B-2型にもRキットを搭載することはできましたが、一部の内容がB-1型のそれと異なります。
B-2/R2型はB-1/R2型と同様な30mm機関砲搭載型ですが、装備している機関砲がMK101からMK103に変更されています。MK103はMK101の問題点を改善した機関砲で、発射速度が毎分420発に向上し、さらに100発のベルト給弾に対応しています。これによって以前のMK101にあった問題点のほとんどが克服されており、Hs129シリーズの中でも大成功した武装の一つとなりました。尚、この機関砲は高性能故にHs129以外ににおいても幅広く使用されており、いくつかの戦闘機やクーゲルブリッツ対空戦車にも搭載されました。
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B-2/R3型は、かの有名なJu87G“カノン・フォーゲル”の物と同じ37mm BK3.7機関砲と弾薬12発を胴体下に搭載したものです。胴体下に一門のみの装備となるため、一見するとJu87Gよりも火力が低く無価値なのではないかと思われるかもしれませんが、中心線上に装備されているため反動による射線のブレが少なく、Ju87Gのそれより良好な命中精度を得られたとされています。この装備を搭載した場合、スペースの問題から7.92mm機銃は取り外されました。

MK103やBK3.7は絶大な貫通力を持っており、実戦投入されたこれらの武器は目覚しい活躍を示しました。しかしISシリーズを始めとするソ連重戦車群の進歩は著しく、1944年以降には、これらの怪物機関砲を以ってしても撃破困難な強敵に苦戦することとなます。そこで続いたB-2/R4型は、なんと対戦車砲である75mm PaK40の自動化改造砲 PaK40Lを胴体下に搭載してしまいました。当然重量の増大も凄まじく、R1型のような翼下爆弾架は当然使用できなくなっています。引き換えに得られた貫通力は凄まじく、硬芯徹甲弾を用いた場合は至近距離において130mmもの装甲板を撃ち抜く事が出来ました。
硬芯徹甲弾は希少資源を用いるために高価・貴重であり、戦車においては「決めの一発」であったり、それどころか全く配備されていない等のケースもあったようですが、Hs129のような対戦車攻撃機の場合、戦車戦とは比較にならないほど接近して撃つために、遠距離で威力が落ち易くなる硬芯徹甲弾とはむしろ相性がよく、戦車に比べて優先して配備されていたようです。



量産された最後の型であるHs129-B3型も、B-2/R4型と同様に75mm砲を装備しています。しかし、B-2/R4型のような対戦車砲改造の間に合わせではなく、れっきとした機関砲であるBK7.5に置き換えられています。この機関砲は75mmの口径がありながら毎分40発の発射速度を持ち、標的までの距離と速度次第では一航過で2撃を与えることも可能です。弾丸は電気動作式のリボルバー型ラックに12発が納められていました。また、B-2/R4型の重装備には無理があったと見えて、この型では重量軽減のためにBK7.5以外の武装は全て廃止されています。
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以上が主な生産型のバリエーションとなりますが、FHSWでは今回、Hs129B-1/R1、Hs129B-2/R2、Hs129B-3の3タイプを実装致しました。インゲームでの性能としましては、硬さはIl2並かそれ以上に、運動性については、双発であることと小柄な機体故に、若干IL2より優れています。特に直進安定性は非常に高くなっており、対地掃射時には抜群の安定性を持った射撃プラットフォームを提供してくれることでしょう。

Hs129B-1/R1の固定武装は20mm機関砲でしかないので、機銃掃射による対装甲攻撃力は余り期待できません。しかし、今回FHSWでは対人爆弾仕様ではなく50kg爆弾6発を搭載した仕様を再現しており、また対地反跳爆撃も可能なので、熟練したパイロットならば対戦車戦闘も十分可能です。
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Hs129B-2/R2はR1型とは打って変わって、対戦車攻撃機としての色合いが強くなります。似た性格の機体としてJu87Gがありますが、こちらは威力こそ高いものの僅か12斉射分の弾丸しか持っていないため、飛行場との往復に多くの時間を費やす事になりますし、無駄弾を避けたいが為に攻撃のチャンスを逃してしまうこともあります。一方のHs129B-2/R2は搭載する機関砲の貫通力こそ若干Ju87Gのそれより劣りますが、何よりの強みは100発もの搭載弾数です。この豊富な弾数により、Hs129B-2/R2はJu87Gよりもはるかに長い間戦場に留まって敵戦車に穴を開ける作業に専念することができます。
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Hs129B-3にもなると、75mm機関砲以外の全ての武装が廃止されてしまっているため、いよいよ対戦車攻撃“専用”機としか呼べなくなります。その代わりに得た攻撃力は凄まじく、例えIS重戦車であろうとも2発と耐えることはできません。発射速度は一般的な機関砲ほど速くないため、第二射を必要としない正確な照準が重要になります。
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一方の防御面はと言いますと確かに耐久力そのものはIL2より高いものの、この機体は全シリーズ通して単座であり、後方機銃手を備えていません。また速度性能もあまり良いとは言えないため、敵戦闘機に出会ってしまった場合は最初の一撃を決めて地上にお帰り頂くことに賭けるしかないでしょう。一旦噛み付かれてしまうと味方の援護なしに振り切ることは困難なので、高い耐久力も磨り潰されてしまいます。



Hs129は特に東部戦線での活躍が知られている機体ですので、FHSWにおいても東部戦線マップに登場することになると思います。加えて、あまり知られていないのですが、実は本機はアフリカ戦線にも参戦しています。アフリカ戦線自体が1943年で終わってしまうため、75mm搭載型は参戦できないのですが、各型を合わせるとそれなりに幅広いマップで見かける機体となるでしょう。しかし、本機はフランス戦以降の西部戦線に配備されることは無かったため、残念ながら史実に則った西部戦線マップに出現しないことになりそうです。



尚、今回実装するHs129のモデルはBattleGroup42 MODから提供されたものですが、そのままの採用ではなく、私FHSWmanによって機体からコックピットまで大幅にモデルの修正が行われており、またテクスチャも一新してみました。南は砂漠の蜃気楼に霞む砂色塗装から、北はロシアの吹雪に映える冬季迷彩まで、7種類のテクスチャバリエーションが用意されています。
また、修正版のモデルは次回以降のバージョンのBattleGroup42 MODに逆輸入される可能性がありますので、二つのMODで新しいモデルを楽しむことが出来るかも知れません。
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以上、Hs129についての解説とレビューは如何だったでしょうか。
「でっかい大砲積んだヒコーキ」というものは秘密兵器心をくすぐるのか、なかなか個人的に思い入れの強い機体でもありまして、ついつい記事も長くなってしまいました。ここまで読んでくださった方が一人でもいれば幸いです。
それでは、次期FHSWの“空飛ぶ缶切り”をお楽しみに!
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